あらたふと 青葉若葉の 日の光
松尾芭蕉
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
先月、出張にて関西を訪れた折
かねてよりずうっと目にしたいとおもっていた場所にふらりと出掛けてきました。
目指した場所は、南近江の山中奥深くにある 狛坂廃寺こまさかはいじ。
かつて、ここには平安初期創建の立派なお寺がありました。
そこに堂々とした美しい 摩崖仏まがいぶつ があることを以前より何度も
人伝にしておりました ....。
地図でみると、狛坂寺は、金勝山の続きに位置し、こんしょう とも こんぜ
ともよみ、最近では近江アルプスなどとも呼ばれ、琵琶湖の南、栗太郡の奥深くに
ある連山で南側は信楽に接しています。
昔は五十町もの険しい坂道を歩いて昇ったので,こんなところへは二度とは
『こんぜ』 と人々は言っていたともいわれています.
金勝寺の裏手の尾根などから、そこを訪れた方も多いのだろうけれど
道の整備された現在でも、そう容易くは辿り着けない。
こんな山中によくも寺を建てたものだという感慨は、そこを訪れたものなら
誰しも持たれるのではないだろうか。
金勝山からの尾根伝いには、国見岳という山があり、そこには巨岩が累々と剥き出し
になっており、日本離れした実に荒々しい絶景がひろがっている。
ここでひとり下界を眺め、風の音に耳を澄ましていると、自分が鷲や鷹にでもなったの
かのような気持ちにもさせられる、というのもあながち不思議なものではない。
しばしの間ときの発つのも忘れ、吹きすさぶ風に身を任せてみる ...。
国見岳の向こうには、近江の象徴とも言われる三上山の優美な姿が眺められ
その遥か先には朦朧とした湖水が見える。
芭蕉が愛した 「湖水朦朧とした近江」 の情景そのもの、感慨もひとしお。
こういう場所が にんげんを磨く、いつの世もそれは変わらないだろう ...。
摩崖仏に辿り着くまでの眼下の景色の明るい美しさと
摩崖仏のある窪地のあやしいまでの不気味な暗さのコントラスト。
夜ともなれば、山の獣がうごめき、吼え狂うような感覚
恐怖感さえふと覚えてしまう。
突然眼の前に現れる6メ-トルを越す巨岩に刻まれた三尊仏。
おもわず感嘆の声を上げずにはいられない美しさ ...。
この摩崖仏が製作された時代は諸説あるが、奈良時代~平安時代前期のもので
狛坂という名からも、渡来系の人々によって作られたものであることは
ほぼ間違いない。(狛坂の こま は高麗を意味し、かつては帰化人の住んだ地とも
云われ、日本に残る石仏としては、最古のものの一つ。)
大陸と日本が出会う接点として、また奈良や京都の舞台裏として
近江は,まだまだつきせぬ興味の宝庫だ。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。