mitate magazine



Gibier/ジビエ 。。。。。






d0090600_14177100.jpg




こういった アイテムを 目にするとき

いつも カルミネさんの姿が 目に浮かんでしまう ........。







      。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



20代の半ば、イタリアで生活していた時期がありました。


それほど、普段動物のお肉をいただくわけでも無く、ましてや狩りに対しては嫌悪感さえ

抱いておりました。(このスタンスはいまでもそれほど変わってはおりませんが)


そんな私に 野生の雉や鴨や野兎や鹿などのジビエ の美味しいいただき方を

教えてくれたのは、ドミニチ家に仕えていたカルミネさんでありました。


カルミネさんはサルディ-ニャ島の出身で、一家を支えるためにひとりイタリア本島に

働きに出て来ておりました。立派な顎髭をたくわえていて、黒いハットにシックなベスト

というのがカルミネさんのトレ-ドマ-クでもありました。


いつも籐で編まれた大きな

バスケットを小脇に抱え、中には 赤ワインやらチ-ズやらパンやらサラミやらと

美味しそうなものが常にたっぷりと入っております。そしてここという場所を見つけ

ますと束の間のピクニック.タイム。お互いに 自慢の喉を披露し合ったりも

しましたっけ、ははは。


カルミネさんは、トスカ-ナの山や丘を歩きながら、野鳥の飛ぶ道を探します。

そしてその場所を見つけますと、茂みにじっと潜みます。

しばらくすると銃声が山中に短く響き渡ります。銃声を初めて耳にしたわたしは

その轟音のあまりの凄まじさにしばし震えを止めることさえ出来なかった。


時には数羽がばさばさと落ちてくることもあります。そのときは雉でありました。


それを いざ収穫と直ぐに持ち帰るのかと思いきや

雉がばさりと落ちた その場所からは絶対に動かさない。何が起きても動かさない。

ここが 雉料理の一番の重要なポイントなのです。

野鳥は直ぐに食べてはいけないのです。まだ肉は固いし旨味がありません。

全てのジビエにはそれにあった「食べ頃」というものがあるのです。


さて雉がばさりと落ちた下は落ち葉のベッド。赤や黄色の絵の具を落とした

パレットのようです。そしてそのまま慎重に念入りに落ち葉を掛けて、腰からぶら下げた

ザルのようなものを被せて、ドミニチ家と名前の付いたプレ-トを引っ掛けますと

そのまま放置してしまいます。雨が降ろうとも、雪が降ろうとも決してその場所から

動かすことはありません。


そして一週間を過ぎた頃に、カルミネさんはその出来具合いを見るために山に入って

いきます。何日かすると嬉しそうな表情を称え、くたっとした雉を抱えて帰ってきます。

もうあの輝くばかりの羽の面影はそこには無く、艶の無い「腐乱死体」そのものです。


それを近くの知人が経営するレストランの調理場に持っていきます。

もう羽は軽く触れるだけでするりと取れる。そして皮を剥いた肉はどす黒い紫色。

辺りにはぷうんと肉の腐った特有の悪臭が漂っています。

肉を削いでももはや血は出ません。もう肉と血が一体になってしまっているのでしょう。

この時点で、私はもはや嘔吐寸前の状態。


しかしひとたび、そのどす黒い紫色の肉を薄く削いで焼いてみますと、フライパンに入れた

瞬間、もの凄い臭いに気絶しそうになるのだが、しかし、くすんだ黒みの中から、真っ赤な

薔薇の花が咲くときのような、見る見る間に肉は鮮やかなルビ-色に変身してしまう。

悪臭が、いつの間にか快い方向へと変化している。

入れてもいないのに、なぜだか野菜や果物の香りさえ感じてくるぞ。

味付けは一振りの塩だけで充分。それ以外にはなんにも要らない。


自然の中に放置されたものは、腐敗の風味が全て異なるもの、空から落ちた雉を

たった一メ-トルずらしただけでもその本来の風味が損なわれてしまうそうです。

これってまさに山の魔術ともいえますよね。俄には信じ難いことでは

ありましたけれど、周りの方々は皆口を揃えてそう言っている。



山は、野菜や果物だけでなく、肉までをも産む ......。


なぜ 山に 登るのか? なんていう問いもありましたよね。

わたし 山男でも なんでもないのだけれど 

山って なんとなく哲学的な要素に満ち溢れている。そこには何かしらの

深みのようなものさえ感じてしまう。


イタリア山中におけるそのときの体験は 

死とはどういうことなのか?  生き続けるとはどういうことなのか?

人間の中に共存する残虐さと、驚くべき叡知。  追うもの、そして追われるものの心理。

必ずどこかしらかで繋がっている 自然界の驚くべき連鎖関係 etc  ......。 

身を以て 考えさせられることばかりでありました。


「食物を粗末にするな!!」 、「愛情を込めて料理せよ!!」

なんて 言葉だけなら 誰にだって言えることだとおもう。

だけど、実際に 自分の手で、生き物を殺生し、解体し、調理するという過程を

踏んでみると、この言葉の持つ意味の大切さが骨身に浸みて感じられてくる。


いま思い返してみても、生きていく上での人間の根幹みたいなものに

ちょっぴりだけど 触れることの出来た、貴重なひとときでありました。


カルミネさんは、今日も あの山で、あの風を感じているのだろうか?


今度のお休みは、山に 出掛けてこよう 。。。。。。



長文にお付き合い頂きありがとうございます。

気を付けてはいるのですが、ついつい熱くなってしまいました。笑い



本年も mitateを ご支援いただきまして誠にありがとうございます。

また 来年も 宜しくお願い申し上げます。


どなた様も 愛に溢れた 素敵なクリスマスのひとときを。

そして 来る年が 皆々様に取りまして素敵な一年でありますことを

心よりお祈り申し上げております。 Ciao!!

[PR]
by mitatejapon | 2008-12-25 09:26 | ワ-ルド レポ-ト | Comments(14)
Commented by おやスケ at 2008-12-25 11:13 x
Merry Christmas !!mitateさん。熱い記事を一気に読みました。全然長く感じないですよ~。ほぉ~というため息しか出ませんでした。山に挟まれた狭い町で育ちましたので、有り余る体力の多くを山で費やしました。山の間にはアユが遡上する川がありまして、川の、段々になっている堰の所で、猟師が脇に猟銃を置き、イノシシを解体してる所を最初から最後まで驚きと尊敬を持ってみた記憶があります。発酵なり腐敗を通しませんでしたが、野生のイノシシの肉はうまかったです。所は違いますが、こういう現場に居合わせるって大切ですよね。
暖かかったり寒かったり安定しませんが、お風邪を引かれませんよう、祈っております。いい話、ありがとうございました。チェルシー。
Commented by ynagamori at 2008-12-25 14:46 x
クリスマスに身が引き締まるような お話 ありがとうございました。
すべての命に生かされて生きている事を強く 感じさせてもらいました。
 私も山に囲まれたところで育ったので山の姿に影響されています。故郷から離れていても・・・・人間はちっぽけな 一員でしかありませんね。
 最後になったけど メリークリスマス!
Commented by ぺー at 2008-12-25 21:18 x
目の前に夢のような世界が広がってうっとりさせていただきました。 
どの場面も素敵な物語です。  
大地に生かされているわたくし達なのですよね。 
感謝すること、クリスマスの大切な意味の一つだと思います。 
毎日クリスマスの心を忘れないようにしたいです。 
御降誕おめでとうございます。

わたくしの鶏だってルビー色に変わるんですよ! 
骨をガキ!!!っと噛み砕けば・・・・
Commented by umih1 at 2008-12-27 20:46
とても素敵なお話・・・mitateさん、これからも素晴らしい経験を記事にしてくださいね。
わたしは行動範囲が狭いので、いつもこちらに伺うと、それだけで視野が広がる気がするのです。
mitateさんの写真も大好きで、あの時のあの写真は・・・なんて、ふとした時に思い出したりします。
いつも感謝の気持ちがあふれているようで、尊敬します!
今年もわずかですが、無事に一年が過ごせて良かったです^^
来年も再来年もよろしく・・・チェルシー♪(笑)

Commented by Konatu_sw at 2008-12-28 22:08
mitatesさん、一年間、素敵でお洒落な話題をありがとうございました。
そして、もちろん、来年もエスプリのきいたお話を楽しみにしています。
このお正月休暇が素敵になりますように!
どうぞ、よいお年を!
Commented by mitatejapon at 2008-12-29 09:44
おやスケさん.


おやスケさん,お返事が遅くなりまして失礼致しました.
おやスケさんがお育ちになられたところもとっても美しいロケーションなのでしょうね,読ませていただきましてそんな情景が目に浮かんでまいります.
狩りをした野生動物の解体だなんて野蛮だ,なんて声もありますけれど そういうことを実際に自分の目で目の当たりにしますと
食べ物や,自然に対する考え方って随分と変わってくるものですよね.この経験の有る無し,ってきっと生きていくうえでとっても大きなことだとも思えてくるのですが.

今年はこうして おやスケさんともお知り合いになれまして色々なことを教えていただけましたし,考えさせられることも多ございました.また来年も宜しくお付き合い下さいませ.
おやスケさん,どうぞ良いお年をお迎え下さいませ!!
Commented by mitatejapon at 2008-12-29 09:58
ynagamoriさん.


ynagamoriさん,お返事がおそくなりまして失礼いたしました.
そうでしたよね,ynagamoriさんも深い山のエリアでお育ちになられたのでしたよね.山ってこういう側面から見つめてみますと
とっても荘厳なものを感じてしまいますよね.
トリュフにジビエに.....,カルミネさんはことしも忙しくしていたのだろうなあ.久し振りに会いに行ってみようかな.
こんな長い独り言にお付き合いいただけまして有難うございます

ynagamoriさん,今年も色々と Merci,また来年もどうぞ宜しくお願いいたします.良いお年をお迎え下さいませ!!
Commented by mitatejapon at 2008-12-29 10:16
ぺーさん.


ぺーさん,お返事が遅くなりまして失礼いたしました.
東京におりますと目にする機会もありませんので,こういうことって全く話題にもならないのではありますけれど,いまの季節の
ヨーロッパではもうそれこそジビエ一色のような雰囲気でもあるので,毎年この時期こんな事を考えておりました.
ですけれど,なんだか日本のクリスマス,年末の雰囲気には全くそぐわない話題ではありますよね.気を付けませんとね.

今年はこうして ペーさんともお知り合いになれまして,色々と新しい発見をさせていただいたり教えていただけることも多ございました.ほんとうにありがとうございます.
また来年も宜しくお付き合い下さいませ.どうぞ良いお年をお迎え下さいませ!!
Commented by mitatejapon at 2008-12-29 10:37
うみさん.


うみさん,わたしもおんなじですって,それほど行動範囲が広いわけではないんですよ.ちょっとだけ天の邪鬼なだけなんです.
世間の多くの人々がみんなおんなじ話題や方向を向いていらしゃるのだったら,じゃあ全然違う方向のことを書いてみようかな
なんて思っただけのことだったのです.ははは

わたしもうみさんの書かれる記事からはいつも多くのことをいただいております.こういう繋がりって大切に育んでいきたいものですよね.うみさん,いつもありがとう.こちらこそこれからも
宜しくお付き合い下さいませ.良いお年をお迎え下さいませ!!

うみさん,今頃は大掃除に汗を流されていらっしゃるのでしょうね,腰を痛めないように頑張れ〜〜!!笑い
Commented by mitatejapon at 2008-12-29 10:45
こなつさん.


こなつさん,いつも温かなお言葉をありがとうございます.
わたしも こなつさんの写真や,書かれる記事にどれだけ心癒されましたことやら.来年はね なんとなくお会い出来るような予感がしているんですよ,わたし.
こなつさん,ご注意あそばせ!! ははは.

こなつさん,来年もどうぞ宜しくお付き合い下さいませ.
良いお年をお迎え下さいませ!!
Commented by Konatu_sw at 2008-12-29 18:30 x
アラッ! ドキッ! です。

大変!  エステ、エステ。。。  ダイエット、ダイエット。
Commented by mitatejapon at 2008-12-30 10:28
こなつさん.


くすくすくす.....

No problem!! 

いまのままで充〜分に 素敵なこなつさんだと想っておりますよ

わたしの方こそ,あちこち磨きをかけませんと.ははは
Commented by co_conuts at 2008-12-30 14:39
mitateさん、こんにちは。^^
長かったですけど、最後まで読みたくなって全部読みましたよ。
なにかとても納得するところがありました。

実は、私はこの年になってもまだ、こういうことを深く考えていると、
頭がヘンになってしまいます。(^^A
だから普段は、この手のことは、ほとんど考えないようにして
無意識の内に封印してあるようです。つまり逃げているというか・・・

「生きていく上での人間の根幹みたいなものに
ちょっぴりだけど 触れることの出来た、貴重なひととき」と書かれていましたけど、
そうですね。私もこういうお話を読ませて頂いただけでも、
良かったなって思います。
Commented by mitatejapon at 2008-12-31 14:57
小夏さん.


小夏さん,こんなに長〜い記事にお付き合いいただきましてありがとうございます.
普段はわたしもこういうことに付いて深く考えている訳でもないのですけれど,世間の流れが,クリスマスだ,忘年会だというようなときに,なんとなくふとこんなことを考えておりました.
やっぱりちょっぴり天の邪鬼な性分なのでしょうね....笑い

ことしは思いがけなくひょんなきっかけから 小夏さんとお知り合いになり,ときどき くすくすっとさせられるコメントなどもいただきまして楽しい時間を過ごさせていただきました.こういうご縁って大切に育んでいきたいものだとしみじみと感じております.
小夏さん,来年もどうぞ宜しくお願いいたします.
良いお年をお迎え下さいませ!!
<< 大晦日  You've got ... >>


2%骨董、98% funky stuff ...
古民藝.骨董 mitate
古民藝.骨董
Gallery ULALA
店主の日常

掲載写真.テキストの
無断転載はお断り致します。 

facebook 

instagram
ブログパーツ
カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
こんばんは、murmur..
by mitatejapon at 22:46
こんばんは、mitate..
by murmur1 at 18:55
よっしーなさん、明けまし..
by mitatejapon at 22:48
今年も飛躍の年となります..
by yossina-lani at 11:19
murmurさん 明け..
by mitatejapon at 14:39
あけましておめでとうござ..
by murmur1 at 22:52
よっしーなさん、またチャ..
by mitatejapon at 19:19
東京国際フォーラムですね..
by yossina-lani at 12:28
こんにちは、murmur..
by mitatejapon at 15:44
ひゃ〜、そうですか。 ..
by murmur1 at 23:11
最新のトラックバック
古道具のある暮らし
from 谷根千ウロウロ
古道具のある暮らし
from 谷根千ウロウロ
Gallery ULAL..
from 谷根千ウロウロ
http://yanes..
from 谷根千ウロウロ
Gallery ULAL..
from 谷根千ウロウロ
番外はらっぱ市
from 谷根千ウロウロ
You TubeがWii..
from 生活のキーワード
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧