古ぼけたお堂を見ていたら
ふと 良寛さまのことが 頭に浮かんだ .....
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江戸時代後期、越後.出雲崎港の、数百年の伝統を持つ名主の家の長男として
生まれながら ある日突然、その全てを投げ捨て仏門に走った少年 良寛。
二十年にも及ぶ曹洞禅林での厳しい修業を果たしながらも寺の住持ともならず
ついには天涯無一物の乞食僧となり放浪の身となる良寛。
人里離れた山の庵に暮らし、寒村を托鉢することにより
その日の衣食を得る厳しい生活を続けながらも
村の子供たちと鞠をついては遊び、村人達からは生き仏と崇められ
その詩、歌、書のいずれにおいても江戸時代を通じての頂点にまで達した研鑽の人。
その澄み切った宗教観、自然を そして人々を愛し
その胸には常に熱い正義感を抱いていた人 良寛。
良寛さま、といえば その人柄を偲ばせる数多くのエピソ-ドがあるのだけれど
こんな話が わたしは好き .....。
「泥棒の話」
ある秋の夜のことである。
良寛は日中の托鉢の疲れからか、布団にくるまって早くから横になっていた。
外には月が出ている。
良寛がうとうとしていると、明け放しの木戸から人が忍び足で入ってきて、中の様子を
うかがっている気配がした。どうやら泥棒らしい。
それにしてもどうしてこう何にもない小さな庵に忍び込んで来たのだろう。余程困っての
ことだろう。
哀れに思った良寛が眠った振りをしていると、安心したのか泥棒がそろそろと庵の中に
入ってきた。しばらく部屋の中を物色しているようであったが、何一つ盗るものがない。
やがて泥棒は寝ている良寛の掛け布団に手を掛けてきた。
「布団が欲しいのか」と気が付いた良寛は寝返りを打つ振りをして泥棒の盗り易いように
してやった。
喜んだ泥棒はその布団一枚を担いで山道を下っていった気配である。
気が付くと不意に寒さがぶるりと襲ってきた。
『ハ、ハックション.....』、良寛は立て続けにくしゃみを三つほどした。
余りにも外が明るいので窓を明けて見てみると月が煌々と輝いている。
しばらく考えていた良寛は机の上の筆を取り紙切れに一句書き付けた。
♪ 盗人に とり残されし 窓の月 ♪
かつて こんなにも優しく、温かく、おおらかな
美しい心の持ち主が 日本に存在した。
ほんの少しだけでもいい、こういう境地で大胆に生きてみたいものだ。
こんな時代だからこそ,私たちの心の中で 人生の指針とするべく
古の中から学ぶべきこと、って まだまだたくさんあるもの
なのかもしれない .....